コラム

学校と塾~中高一貫校のケース~

 学校と塾という観点でこれから語ってみたいと思います。これは、弊塾のガイダンスでご父兄を前に語ることとダブりますが、今回ブログを通して、教室内で、十名弱のお母様やお父様を想定して、超プチ‘講演’のつもりでお読み頂ければ幸いです。
 中高一貫校、それも特に小学校から内部進学がある女子系の私立の学校では、4月の入学ガイダンスで、次のようにご父兄に話すケースが多いと聞いています。
 
 「これからは、塾の勧誘の電話や郵便物などがありますが、中学校のうちは、塾など通わせず、学校の勉強だけをきちんとやらせてください」~由らしむべし知らしむべからず~
 
 このアドヴァイスは、女子系の学校のみならず、神奈川県の超マンモス進学校T学園が自校の生徒にも申し伝えでいたことが、10年以上も前に耳に入ってきました。ですから、以上の台詞は、結構多くの学校で話されていたものと思われます。しかし、この学校からのこうした‘お触書’は20年前、10年前、そして近年にかけてそのトーンが弱まってきたり、また、外野からの情報が薄れかけてきている{※あまり聞かれなくなってきている}のも事実です。これは、私立の中高一貫校が、少しでも、中学段階で、英数などがつまずかず、高校へ進学して、そして、自校の大学合格実績上げようといったことを考慮・視野に入れ始めてきた姿勢のあらわれとも考えられます。
 
 では、私立の中高一貫校で、中学の段階で、<塾禁止令>が何故出されるのか、理由は次のことが考えられます。
 
 ①教科の先取り(抜け駆け)は、40名の集団の雰囲気を乱し、授業内容を知っている生徒と初見の生徒とのギャップが生じ、教師にとって教えにくい、また、生意気と感じ頭にくる教師感情も恐らくあるでしょう。
 
 ②生徒の抜け駆けは、教師自身の授業(教え方)に対して「先生!それって、こう考えた方が、単純明快で、分かりやすくないですか?」的、一種、できる生徒の批評家的目線を学校全体が懸念しているからとも考えられなくもありません。
 
 ③これは、非常に意地悪な見方、ある意味穿った見方ですが、学校の英数という教科の先生の力量以上の講師が塾・予備校界に存在することを知らしめないように、自校の瑕疵教師の存在を自覚させず、自身の努力が足りないのだと、軽い学習上の自己責任的洗脳を行っているとしか考えられないケース。これは、江戸時代の鎖国同様に、学習の鎖国校と言わざるを得ない、西洋の文明(塾・予備校)の優秀な講師と接すると国内の文明(自校の教師)の底の浅さが生徒に露見されるのを恐れての方針かとも思われるのです。実は、塾否定派の大方の本音(学校の教頭以上理事長以下の学校運営者の本音)はこの③にあると考えられるのです。
 
  これから述べることは、昔、神奈川県にあるT学園が、普通進学コースと超進学コースとを分けていなかった時代のことです。しかも、超カリスマU校長(兼理事長)が存在していた頃です。「T学園は、出来ない生徒を、東大や医学部、早慶に合格させてあげる学校です」というお触書が出されていたころです。“うちでは、塾・予備校の機能も兼ね備えているので、塾などは、不要です”と学校募集ガイダンスで触れ回っていても、いざ、入学すると、寝る暇もないくらい、当然、塾など通っている曜日も時間もないほど、無謀な宿題を課していた頃のことです。まるで、「お前らは、栄光・聖光や浅野を落ちて入ってきた連中だ、素質もへったくりもない、演習の千本ノックだ!」ばりの滅茶苦茶にしてべらぼうとも言える量の宿題を出していた頃が印象深く残っています。それが原因で弊塾を中3で辞めっていった生徒が数名いたことが印象深く記憶に残っています。その理事長も、語っていましたが、「弊校に入ってくる生徒は、天才でも秀才でもない。準秀才以下です、それを如何に演習による演習で、数や量で勝負、数量の多さの演習で鍛え上げて、如何にして東大や国公立、早慶に入れ込むか」という、彼自身の言葉も深く記憶に残っています。ですから、その学校の生徒が利用する駅近辺には、その学校の、特に落ちこぼれ、ついていくのがやっとの生徒のT学園専用の補習塾があまたあると聞いています。それに対して、この学校では、抜け駆け形式の進学塾に通っている暇が、優秀な上位3分の1に入る生徒にとってすら時間がなくなってくるのです。このT学園に勤務する教師の力量と生徒数の多さ、これを鑑みた時、学校方針として、<学習の鎖国政策>をとらざるをえなかったと考えられるのです。
それでは、中高一貫校における、中学の段階、それも英語に特化してこれからお話してみようかと思います。
 神奈川県にある中高一貫の女子校、特に小学校からあるYF学園やSS学園のケースをお話します。
 勿論、こうした校則も厳しいお嬢さん学校では、あまり、「受験、受験、偏差値、偏差値、一流大学、一流大学」と叫びまわる世知辛い教育の風(情勢)、即ち、外野(教育産業や他の超超進学校の生徒)とあまり交わって欲しくないといった、学校生活の本来の姿(部活や課外授業や交友関係の深化など)に専念してほしいという理想(学校方針)があってのことでしょう。これはこれで正しいのです。しかし、学生の本分としての、勉強、特に英数という教科のしっかりとしたカリキュラムと優秀な教師という担保があって初めて、説得力をもつのです。
 どうみて、こうしたお嬢様学校には、大まかですが、上位4分の1に入る地頭のいい生徒、もしくは、自己学習ができる勤勉な生徒、これを前提に話しているとしか考えられないのです。3~40年前なら話しは別です。学校と自宅、せいぜいテレビか音楽程度の誘惑しかなかった時代です。黒の置き電話しか連絡ツールがなかった昭和の良き時代でもあります。生徒も、学校と自宅、家庭教師や場末の個人塾での補習で済まされていた時代です。しかし、現代では、様々な勉強の邪魔をする誘惑の文明の利器(スマホ・パソコン・多種多様なゲーム)が身の回りにあふれ返っています。学校の授業が理解不十分な生徒、全くついてこれない生徒にとっては、自宅に帰るや、スマホのチックやゲーム機、またテレビ番組など昔の学習上の敵はあまた存在しています。自らを律して、自宅で勉学に励もうなどという意志・やる気はそがれる環境に彼女たちは晒されています。学校の授業が理解中途半端で、自宅で勉強しない、そして塾にも通わない、これでは、上位4分の1の上層と中間以下の4分の3層の学力格差は埋まろうはずもありません。
 これは一般論です。中1の段階でクラス40名の中、90点代を定期試験でゲットする生徒は、10名弱は存在するでしょう。しかし、中2になると、90点代は数名、80点代が10名強になるものです。そして、中3になると、90点代など1、2名ほど、80点代が10名弱となり、大方の生徒は、中1、2年時代にゲットした高得点など夢のまた夢になってしまうのが、学校の定期テストの実態です。
 中学1年の時、80点代をゲットしていたのに、中2になると急激に成績が落ちる一番の原因は、初めての科目英語が、初段回で、範囲が狭い、単語や文法も易しい、よって期末中間テストでも理解半分で丸暗記でテストを毎回凌いできた、しかし、中二ともなると、単語や文法も難しく、量も倍加する、しかも、中2のテキストの試験範囲が7割、そして復習テスト的初見問題が3割出題、この3割こそ、中1の実力のチェック問題でもあるのです。中途半端で、中1を何とか凌いできた生徒は、この中2でぼろが出てくるのです。これが、中3ともなれば、試験範囲以外の3割が中1~2の内容を試される初見的問題で埋め尽くされます。よって、中2以上に高得点なぞ望めない“学習上の悪のスパイラル”に彼女たちは陥ってゆくのです。
 これは、私個人の経験上の見解ですが、中学1年の内容を週2時間弱で教えても、全く自宅でその塾で習った内容を復習せずとも、次の週にその7~8割は記憶に残っているのです。これが、中2の段階になりますと、今週10教えても、次の週は、記憶に残っている知識はせいぜい5~6割程度に下落します。更に、中3ともなれば、10教えた内容は、復習しなければ、その生徒の頭には、多くても2~3割しか残っていないものです。個人塾で懇切丁寧に教えてもこのレベルです。英語(※他の教科も同じですが)というものは学年が上がるに従って、どれだけ内容が高度化し知識量がネズミ算式に増てゆくものです。これを、塾を一切通わずに、標準的な地頭の生徒、それも、集団40名の中で授業を受け、しかも、自宅では、スマホやゲームといった誘惑が待ち構えている環境で一切復習せず、どうして英語は勿論、数学などの科目が伸びるでしょうか。
 <塾禁止令>の女子校のお達しを無視して、ある意味、私の意見に似ている、また共感するご父兄がいます。学校の建前主義、綺麗ごと主義、理想主義、これに疑念を抱き、中学1年から、隠れキリシタンならぬ、隠れ塾派のお母様Mさんが、入塾されてきました。その女子生徒は、当然中1では、学校の定期テストでは、平均点より10点前後以上はキープしてゆきます。中2になっても、その母集団(平均点)からは上のレベルを並行飛行してゆきます。そこでです。私の意見と同じMさんのお母様が、中2の父兄会や授業参観で、他の中2になった女子生徒のお母様Kさんと次のような話しのやり取りをしたと言います。
 
 Kさんのお母様「あのうちの子なんですけど、中二になって英語の成績が落ちて、ショックなの、Mさんちは、学校の方針通り塾なんか通ってないわよね?」
 Mさんのお母様「あのね、ここだけの話しよ、私なんか、学校の方針なんか信じていないし、こっそりと、中1から英精塾という英語の塾に通わせていたのよ、だから、英語は中2になっても、80点代はゲットできていいるのよ」
 Kさんのお母様「あ!そうなの…。やっぱりね、Mさん、塾に通わせていたのね、じゃあ、あとで、その英精塾とやらを紹介してよ」
 
 そこで、Kさんが入塾されてくる、こうしたケースが多いのです。中3になって、我が子の英語の成績がもっと酷い生徒のRさんは、このMさん情報を、Kさんに遅れること、さらに1年後に知って、駆け込み寺のように入塾してきますが、英語の実力は、MさんやKさんのお嬢さんとなかなか埋まりません、ですから、弊塾では、そのRさんを中2(※時に中1)のクラスにも出席させます。しかし、一般には授業時間が倍となりますが、かの有名なTR塾{※時間数が増えれば増えるほど授業料を請求してきます}とは違い、授業料は週1回のままです。
 何度も繰り返しますが、
 
①クラスで上位4分の1に入る地頭の良い生徒
 
②小学校時代に英語会話教室に何年か通われていた生徒(※英検3級以上ゲットの生徒){このタイプでさえ、中2の後半からカチカチ山の泥舟の如きに成績が沈んでゆく生徒が半分はいます}
 
③海外で数年生活したプチ帰国子女の生徒{※高校生になると伸び悩む生徒が半分以上はいます}
 
④標準的な地頭{上位3分の1以内にいる}の生徒でも、自宅学習が謹厳実直できる生徒{※スマホやゲーム、テレビに関心がないタイプが多い}
 
⑤週末など、定期的にお母様あたりが、その週に習ったことをチェックしたり、日ごろ親子で勉強を教える雰囲気にある家庭環境の生徒{※中3の思春期あたりから、こうした学習上の幸福な関係は崩れていく傾向が強い}
 
 以上の①~⑤に該当しない中学生のお子さんは、英数に関しては、成績が学年が上がるに従い、下降してゆくのが、日本の私立の中高一貫校の特徴なのです。

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