コラム

コンテンツがあってのツールでしょうが!

新型コロナ  オンライン  学べるもの 深耕
                                 朝日新聞(2020年7月3日)
 
親が「先生」は限界あり
                     市井紗矢耶香さん  タレント:モーニング娘の元メンバー
 
 公立の高校、中学校、小学校、そして保育園に通う4人の子どもがいます。約3カ月の休校期間は、家が「学校」、私は「先生」でした。
 学校は基本的に紙ベースで、オンライン授業はほとんどありませんでした。授業動画の配信や、ダウンロードして利用する課題が少しあっただけです。
 省略
 メディアで先進的な学校が紹介されるたびに、「うちは遅れているのではないか」という不安がありました。「せめて」と参考書を買いにいくと、近所の書店では品切れ。多くの家庭の焦りの象徴のように見えました。
 省略
 何よりきつかったのは、まだ習っていない単元を、私が教えなければならなかったことです。これまで宿題と言っても学校で勉強したことだったのに、休校期間は私が「先生」にならなければいけない。
 省略
 親が家にいられない家庭もあるでしょう。また子どもが小さければ、留守番をしてオンライン授業を受けることは現実的ではありません。そういう一つひとつの課題をきちんとすくい上げて、取り残される子どもがでないようにして欲しいと思います。
 
 
 市井さんのご意見が、まさしく、世のお母さんの最大公約数にして、最小公倍数的感想ではないかと思います。
 テレビに映し出される、某私立学校の“素晴らしい”オンライン授業や、双方向型先端的授業など、一般の公立学校、また、大方の私立学校でさえ、それほど、理想的な教育はなされてはいないのが実状です。弊塾の生徒にも、聞き質すのですが、まったく、放り投げの“自主的予習”そして、今までの、分かり切った項目・内容の“ドリル的復習”のみ、というのが、まさしく市井ママの弁が言い表してもくれています。
 特に、各自、未履修の項目を、自宅学習、それも、“プリントのみでやりなさい”・“予習をやって来なさい”的自宅学習を課す学校は、無責任千万とさえいえるものです。この点、マスコミは、日本のデジタル化、オンライン化の教育面への立ち遅れを猛批判してはいますが、それは、教育というツールのみの範疇には収まり切れないものがあるのです。
もしもの仮定での話です。世界最先端レベルのオンライン授業が日本の津々浦々まで整備されたとしても、そのコンテンツ、即ち、授業内容やら、授業スタイル、授業手法が、従来のままであれば、自宅のリビングで、生徒は、あくびをして、退屈さながら、“内職”するのが落ちでしょう。教室の空気と何も変わらず、授業スタイルはハイテクというツールを用い、一見して進化しているように見えはするものの、進歩などせず、教育の退化とあいなる成れの果てが想像できます。
 コロナ禍を、これ幸いに、20人学級の実現、そして、教師の増員、さらに、教師の待遇改善、これを誰も言い出しません。イージス・アショア導入の論理と同じであります。数千億もする“イージス・アショア”というタブレット端末を支給するだけ。また、オンラン授業のインフラ整備、こんなものに税金を費やすくらいなら、欧米並みに、20人未満の授業スタイルを確立、実現することが先決です。
欧米では、まず、この20人学級の前提があり、そして、オンライン授業の充実を実現しているのです。日本は逆です。政府は、オンライン授業の実現、タブレット端末の支給、このツールさえ実現すれば、コロナ禍のような災厄が、また、将来訪れたとしても、<盤石、安心だ>方針にうつつを抜かしている無能集団です。「使える英語だ、だから実用英語主義の民間試験を大学入試に導入すれば、高校生は、皆英語ができるようになるはずだ」といった論理と全く同じです。底の浅い思考しかできないのは、政府のみならず、マスコミや新聞も同様です。
 まず先決なのは、アナログの、教室でのライブ授業の充実、さらに、教師の職場環境の改善と、生徒の学習環境の向上、そして、20人学級の実現です。そうです。欧米並みに授業を行える学習環境の整備ができて、初めて、オンライン授業の改革へ舵をきるのが本義だと思われるのですが、如何でありましょうや?
 コンテンツは、置き去り、ツールさえ整備すれば、教育が改善されるなどと考えるのは、性格最悪、教養ゼロ、知性欠如、しかし、見た目のルックスさえよければ、男性にもてる、女性にもてる、そう考えて、結婚するバカップル夫婦が離婚する成れの果てと同じものを、初等・中等教育にタブレット端末の導入を急ぐ政府の方針とダブって見えてきてしまうのです。

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