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オンライン授業で凹んでいる巣籠り学生に告ぐ!

 これは、ある旅行業者が私に語った、数年前のオフレコの弁であります。
 
 「貧乏人は、海外旅行を、金持ちは、国内旅行をしたがります。」
 
今コロナ禍の状況下、テイクアウト、巣籠もり、外出手控え、マイクロツーリズム(星野佳路)などなど、観光業界、飲食業では、猛烈な逆風が吹き荒れています。大衆もコロナ風評による同調圧力から、皆がマスクを装着しているように、消費生活に消極的であります。
 
 以上の某観光関係者の弁を試す意味でも、教え子に次のよう質問を以前したこたがあります。
 
「10万円で、格安ツアーのハワイ1週間旅行と、同じ10万円で、箱根2泊3日の超高級旅館で安らぐのはどっちがいい?」
 
 もちろん、若い10代です。当然ほとんど9割は、海外旅行のハワイを選択しました。しかし、これは、ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンが依然としてレジャーの筆頭格に挙げられるお国柄を考えると20代、30代でも同じような意見であるのは、いたしかたない、容易に想像がつきます。因に、ユーロディズニーランド(パリ郊外)は、さほど繁盛はしていないと聞いています。フランス人は、休暇のレジャーは、人工的な遊園地より、自然の中のハイキングやキャンピングなど、娯楽の基準が異なるからでもあります。これは、日本人が、新築のマンションやピカピカの一戸建てを好むのに対して、フランス人は、レトロで古いアパルトマンや旧居を好む傾向と対照的であることと関係しているかもしれません。こういうと語弊があるかもしれませんが、“文化度”の違いかもしれません。
 
 個人的ながら、私は、フランスへの短期留学以外は、本州から出たこともありませんし、TDLやUSJにも一度も足を踏み入れたこともありません。アメリカ、欧州、中国、東南アジアといった海外旅行は、興味もないし、行きたいとも思ったことがありません。貧乏性なのか、好き嫌いが多いのか、エスニック料理は好きではありませんし、日本食が最高と思っていることも最大の理由です。飛行機は、そのフランスに一度行った際の一回きりしか搭乗してはいません。江川卓や長嶋一茂のように本来飛行機があまり好きでない理由もありますが…。
 
 以前にも言及した、所ジョージの言葉「(このコロナ禍の状況下にあっても生活スタイルは)ワタシは何ら変わっていないよ、何にも」ではありませんが、私も、私の塾の授業スタイルも一切コロナ以前と以後とではほとんど変えていません。
 
 バブルの最中に大学生活を送っていた私は、新聞奨学生として、毎日朝夕刊を配達し、月末は新聞代の集金に明け暮れていた5年を過ごした経験が、「坊さんよりも僧らしく(笑)」という気質を作り上げたのかもしれません。三島由紀夫の「俺は戦後と寝なった」ではありませんが、「僕はバブルと寝なかった(笑)」でもあります。おんぼろアパートの4畳半、テレビもエアコンもなし、4時の夕刊に帰ってこなければならない身の上から、サークルはもちろん入っていませんでしたし、キャンパスの友人関係も薄いものでした。自身で学費や生活費を稼いでいる環境柄、「授業料の元を取ってやろう」といった心根と「語学だけはしっかりやっておこう」のただそれだけで、新聞販売店の私的な日常は、読書だけで明け暮れていました。月に数回、販売店の番頭さん(店長代理・主任)に、新聞寮の他の学生と日帰りの湘南・箱根のドライブ程度がレジャーでもあった日々であります。
 その新聞販売店の浪人を含めた5年間は、自転車での新聞配達とキャンパスの授業だけの日常であったものです。ですから、バブルが弾けた、1990年代に入って、「僕の大学生時代はバブルというものだったのか!」と後になって、同時代がどういった時代だったのか、後になって、改めて知らされたようなものです。同時代の空気を吸っていない自分としては、幕末の志士が鎖国で海外の情勢に疎かったように、「世界はこんなにも進んでいたのか!」と同じメンタルに似たような感慨に耽ったものです。今でも私は、あのバブルと共演できなかった、遊べなかったことを後悔はしていません。それも宿命と捉えている、受け入れているからです。逆に、5年の巣籠り的学生生活が、自身の内面を熟成させてくれたと感じるからです。まるで、ワインの5年ものの熟成期間のように。こうした経験が、ええかっこしい的に言わせてもらえば、ストイックなる気質を育んだのかもしれません。だからそれを淵源とする貧乏気質なのか、海外旅行をして、空港で疲労感がたまって、元の仕事モードに戻るまで数日かかるような海外旅行は本来好きになれないものです。そうした気分で次の日仕事をするよりも、数日、箱根や伊東の「おかえりなさいませ」と声をかけられる老舗旅館に逗留し、まだ読みおおせていない日本の歴史小説や、海外の古典など、ゆったりとした時間のなかに浸りながら、精神と肉体のストレスや疲労を解消する方が、自身の規範では、どれほどまっとうであるか、こうしたことをよく教え子に話すのですが、分かる生徒は共感してもくれます。そういえば、サッカー日本代表のキャプテン長谷部誠氏はミリオンセラーとなった本『心を整える』(幻冬舎)の中で、私と同じようなことを述べていたことがとても印象的でもあります。
 
 理科系の学生は除外します。文系の学生に言います。大学という所は、自身が高校生の時、また常日頃、関心・興味を抱き、積極的(ある意味独学で)に学んできた領域の確認・進化・再構築する場所でもあるのです。高校の延長で何かを教えてもらうとか、将来の職業に有利な技能や知識などを期待しても大方、期待は外れなのです。
 昔、「何故大学へ行くのか?」と問われて、「大学なんて行ってもしょうがない!」という言葉が吐けるために大学に行くのであると応じた知識人がいましたが、今でも、大学なんていうところは、高卒の卒業証書をもらう程度と同義の場所であると肝に銘じておく必要があります。事実、一昨年、私の教え子でMARCHに進学した数名の文系学生に、キャンパス生活、いや、大学の講義の感想を聞きただしたところ、全員が、「失望した」「がっかりした。つまらない。」と答えました。これは、私自身も、大学で初めて学んだフランス語が、はっきり言って、大学の授業でものになったなどとは絶対に言えない。たた、数割程度、その学びのヒントや仏文法の基本程度は積極的に、まるで砂が水を吸い込むように、必死に吸収しようとしたことが、功を奏していたと思われるのです。
 平成っ子には、馴染みが薄い言葉でしょうが、「早稲田は、卒業3流、留年2流、中退1流」という言葉(ジンクス)が昔ありました。タレントのタモリ、作家の五木寛之や野坂昭如、作詞家永六輔や司会業で名をはせた大橋巨泉など、綺羅星のごとく昭和の文化を華やかにした天才たちです。早稲田という文化圏から外れて、平成に関しても、堀江貴文氏は、東大に入学し、中退です。孫正義など、彼と同じ超進学校ですが、久留米大附設高校中途です、そしてアメリカへと渡米した猛者です。そうです。実は高校時代にすでに、その学生の気質・資質が大方完成していたのが、ある意味、昭和という時代だったのです。それに対して、平成に、特に、後半に生をうけた若者は、どこか、大学時代に自身のキャラや個性、また、技能などを最終構築しようとする《甘ちゃん精神》といいますか、《熟成の遅さ》がうかがえます。それは、ネット社会や便利さなど様々な状況的要因が考えられますが、むしろ、それは、《生ぬるい社会》と弁えてください。その典型がコピペなどの甘え行為です。また、紙の辞書ではなく電子辞書、書籍からではなくネットから様々な情報・知識を得ようとする心根が証明してもいます。つまり、《知的やせ我慢》、《禁欲的知的欲求》、《餓えた知性》、それは、研究者になろうと、公務員になろうと、一流会社のサラリーマンになろうと、実は、就職活動の際に、《積極的な学び》をしてきたか否かで、自身の化けの皮が剝がれるものです。
 
 私が、最も好きな歴史小説、『宮本武蔵』(吉川英治)の一場面です。
 
 十代後半の暴れん坊武蔵(たけぞう)が僧沢庵によって、姫路城の座敷牢に閉じ込められ、書物だけを当てがわれ数年の年月を過ごします。そして、そこから出てきた武蔵(むさし)は、自身の剣を、暴れ狂う“剣”から崇高なる“剣”へと生まれ変わらせたのです。“技”が“知”により、一段上昇した瞬間でもあります。その武蔵は、姫路城を背に、呟きます。「21にしての青春、遅くはない」と。それは、喫茶という慣習に禅という理念を融合させた利休の侘茶の精神と同じものがうかがえます。学校、いや、大学で教えてもらう知識は、ちょうど、表面的な剣術であり、おもてなし程度の茶道にすぎません。それを、いかに、高めるか、それは自身の独学であり、知的欲求から書籍(本)を何冊も、何十冊も、できれば数百冊も読みこんで可能なのです。大学で学ぶ“学問”は、就職への通行手形にすぎません。しかし、その関所を通過しても、それだけでは、その後の人生50年燃料切れとあいなります。それだけは忘れずにいてください。
 
 因みに、昭和40年代の初期であろう。『宮本武蔵』の映画が上映された映画館で、「21にしての青春、遅くはない」のセリフの聞いた時、学生運動盛んな時代である、館内から、彼らのむせび泣く声が漏れ響いたといいます。
 私自身も、大学のキャンパスに足を踏み入れた時、中学校時代の同世代の友人は、すでにキャンパス内にはいなかった。まさしく、この武蔵と同じ心境で大学生活へと入っていったのです。

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