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「好きな球団はどこですか?」に窮する私

 「旗振るな 旗振らすな 旗伏せよ 旗たため ……」(城山三郎) 
 
 好きな球団はどこですか?といった質問を知人などからよく受けるが、私は、いつも返答に窮するのである。というのも、根っから<集団スポーツ>が余り好きではないのか、また、本来が覚めた個人主義者なのかはわからぬが、はっきりとこのチームですと言える球団がないのである。ちょうど、政党支持者のアンケートではないが、無政党派ともいえるのかもしれない。もちろん、個人では、好きな選手や、監督はいるが、その人物がいるから、その球団がたまたまちょっと好きな程度である。
 
 そもそも、熱狂なプロ野球ファンに問い質したい質問がある。 
 もし、1年間阪神の全選手と巨人の全選手を総入れ替えてペナントレースをやったとしょう。それで、関西のターガースファン、そして、東京など全国にいる巨人ファンはその本来のチームを応援する気持ちが起きるのかといった“ふざけた”問いを掲げてみたいのである。
 
 <箱と中身>の問題でもある、このテーマは、スーパーやコンビニでも買える商品を三越や高島屋の包装紙でもありがたがる庶民気質と通底したものを感じずにはいられないのである。
 その地域愛、おらが都市(まち)の球団、などなどが、そのチーム愛への底辺ともなっていて、選手が生え抜き、外国人、他球団からの引き抜き選手などは、FA制度ができてからあまり気にしないファン気質になってきたようでもある。つまり、ファン気質のメジャー化とも言える。その点、広島カープのファンはやはり、ある意味、最も日本的球団とも言える。育成、生え抜き、準純血主義など、往年のV9時代の巨人の遺伝子を広島市民が固持している証拠でもある。
 広島が阪神の2軍と揶揄されたり、ひと昔前の長嶋巨人が、落合を、清原を、江藤を各球団の4番打者を引き抜く行為に出て、野村監督から「野球は4番をそろえたから強くなれるものではない、V9時代のメンバーを観れば明白だ!」と批判された。このように、巨人野球は粗削りな球団気質に変わり果てた。ファンも、落合がきた、清原がきたなどと浮かれ喜んでもいるのは、メジャー化した証拠でもあろう。アメリカはそもそも移民の国、人種も多種多様、人材が誰であれその球団を強くしてくれればそれでいい主義である。サッカーもそれと似た点がある。有名プレーヤーを数百憶で移籍させ、プレーさせてそのクラブチームが優勝すれば、それでファンは満足なのである。
 
 私は、どうもこうした集団スポーツの契約システムがどうも好きにはなれないのである。そもそもへそ曲がりの気質なのかどうかはわからぬが、マサカリ投法の村田兆治、サブマリン投法の山田久志、トルネード投法の野茂英雄は大好きであったが、ロッテや阪急、そして、近鉄のファンにはなることはなかった。広岡達朗時代のヤクルトは好きではあったが、野村時代のヤクルトは好きにはなれなかった。しかし、断ってもおくが、野村克也という野球人は大好きである。この点が知人には理解不能な、私の“天の邪鬼気質”なのかもしれない。
 
 話は、変わるが、ちょっとした寿司屋に行っても、ちらし寿司はもちろん、握り寿司や大将のお任せのネタなど注文せず、自身の好きなネタをお好みで注文するタイプである。そういえば、あの野茂英雄は、名店の寿司屋に行っても、いつも「トロ、ウニ、いくら、トロ、ウニ、いくら……」ときまったネタしか注文しない頑固グルメ人と聞き覚えがある。それほど極端ではないが私もそれに似た節がある。
 
 また、大分まえのことだが、投資信託の勧誘をうけた時点でも、その営業マンに次ぎのように応じて勧誘を拒んだ思い出がある。
 
 「投資信託って、寿司でいえば、あらゆるネタが並んでいる握りすし、もしくは、チラシ寿司のようなものですよね?私は、寿司屋に行って、大将が勧めるネタがあっても、頑固に好きなネタしか注文しない(たち)なんですよ。ですから、自身の好きな株、自身が信頼する株、それも、この会社がつぶれたら日本はおしまいって言えるような会社、トヨタと花王とセブンイレブンとか、つまりトロ、ウニ、いくらだけを買って持っていたいので、投資信託は自身の資質に合いません。自己資金の運命をそちら様の金融アナリストやAIあたりに左右されたくりませんから!」
 
 どうも、私は、ある球団、握り寿司、投資信託といった、他人の好み・考え・主義で組織されているものがどうも好きになれない資質の人間のようである。
 
 次に、こうした“天の邪鬼気質”の人間を自身のファッションに照らし合わせて語ってみたい。(つづく)
 
 
 

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