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成毛眞氏の教育手法の陥穽

先日のヴァイキング(9月13日)いう昼の番組で書道家武田双雲さんの我が子の学習問題を取り上げていた。長男16歳の高校生が、コロナ禍で、オンライン授業に嫌気をさして、学校退学したい、不登校の状態にあるともいう。しかし、彼には、米国留学という夢があり、大検で高卒資格を取りたいという、双雲さん曰く「積極的不登校」であるそうだ。コロナ禍を機に、早く自己の夢を実現するために退学したいのだそうだ。その次男も小学生で、オンライン授業が不満らしく、不登校の逆、「学校の先生にもっとまともなオンライン授業をしろ」と掛け合ってくると鼻息が荒いともいう。兄とは真逆の方向性で、学校に通っているという。 
この武田双雲さんは、学習障害者であることをカミングアウトしている方である。また、一端の成功者で、経済的に優位な社会的位置にもいる。何も、子どもの教育なんぞは、プライベートで行っても問題ないポジションにいる。我々庶民には、余り参考にはならない。 

 
また、落語家の柳家花緑さんも学習障害者であったそうだ。ピアノからダンスにいたるまで芸の塊の才人でもある。義務教育時代勉学系はまるきし駄目だったそうである。双雲さんは、東京理科大を出て大手企業に務めた一見すると学習障害者には、見えないタイプと対照的でもある。
さらに、一時期話題をさらったタレントの栗原類さんなども、独特のキャラで注目を引いたが、その裏には発達障害がプラスに働いてもいた、その側面が、実は彼の個性だったようである。
このように、有名人には、LGBT同様に、自身の学習障害(発達障害)の“負”の側面を公言しておられる方が増えてきている。それは、社会の価値観の多様化が、従来のマイナスの面をむしろ個性、特質、長所として迎え入れる風潮が出来上がってきた証でもあろう。
因みに、50年前に、こうした社会学・教育学と医学の融合した研究(観点)が進化していたら、あの‘宇宙人’こと、長嶋茂雄も診断の対象となっていたかもしれない。いや、仁徳天皇陵の如く、遺跡調査が宮内庁から禁じられているように、彼のキャラの調査には読売から許可がでなかったかもしれない。冗談はここでやめておこう。
そもそも、学習障害とやらが研究で様々なタイプが大衆に知れ渡り始めた、認知されてきている。私個人も、生徒を直接教えていて、今から振り返ると、「ああ!あの子はそうだった」とか、実際親御さんから、「実は、そうなんです」と告白されたこともある。一番の共通点は、超偏った物知り、大学生も真っ青な雑学を身に付けている、一端の小生意気なことが口から出る、しかし、暗記がまるきし駄目、こうしたタイプである。学習障害に関する書籍などを読むと当然うなずけることばかりであった。こうした経験は、40人の学校のクラス、大教室の予備校の授業ではできないものである。
さて、こうした学習障害者の良き側面に光を当てる本が近年多数出されてもいる。こうした本は、類縁者、似た気質の人、どうも学校や会社に馴染めない人を励ます、肯定する主旨のものばかりである。その最右翼は、成毛眞氏の『AI時代の子育て戦略』であり『発達障害は最強の武器である』でもある。

例外のないルールはない。これは、部外者、異端児、奇人変人{※この言葉自体にバイアスがかかってもいる}を社会・会社・学校内に認めよとも解釈できる。いじめに遭っている子、集団生活に馴染めない子、彼らは、わざわざ学校になど行く必要がない論が典型なものである。
しかしであります。例外を原則にあてはめることなかれ。そう私は主張したいのであります。それはどういうことかと申しますと、我が子が、学習障害者でないにもかかわらず、成毛氏が育ってきた育て方をする、また、成毛氏自身が娘さんに行ってきた教育手法を参考にするという陥穽に警鐘を鳴らしたいのであります。

武田双雲、柳家花緑、栗原類、こうしたご家庭で、子育ては、ご自身ではなく、奥様が主導権をお持ちかと存じます。それは、ご自身が例外の人間であり、ある意味、例外的に育てられ、成功したケースであるからです。彼らの半生は傍から見ると参考になる、なるほどと思わせる。しかし、彼らの育てられ方や彼らの教育手法は、世の8割が非学習障害者である状況を鑑みた時、いっこうに参考にすらならないのです。それは、長嶋家の子育て本というものがもしあったとしたならば、その筆者は茂雄氏ではなく亜希子夫人によるものであろう。妻亜希子夫人の流儀が水面1メートル以下の深い流れであり、川面のスーパースター一家という表面だけが派手に、極端にクローズアップされている本に過ぎません。子は親の背中を見て育つ、これを捩って、一茂は父の背番号3を見て育ったに過ぎません。決して、恐らくでありますが、ミスターの教育方針で“今のあの生意気なキャラ”が出来上がったのではありません。これがいいか悪いかの判断は留保します。
一方、高度成長期の文化人のアイドル石原慎太郎一家は、作家でもあり、スパルタ主義{※書籍も出されている}という一貫性で育て上げたこともあるでしょう、亭主関白のキャラから、4人の兄弟が育った模様であります。やはり良純は石原家の異端児でもある。
よって、成毛眞氏の『AI時代の子育て戦略』(SB新書)で主張されている子育て条項は、ほとんど参考にすらならない。むしろ、子育ての危うき指南書でもある。淡い夢を抱きたい親御さんは是非実践なされたいい。カチカチ山の泥舟とあいなることを保証しましょう。
これで私はこんなに痩せました!これでこんなに若返りました!これでこんなに髪が生えてきました!などなどの深夜番組の宣伝文句と似た結果が、成毛氏の書籍を読んで、それを実行して待っている現実であることを弁えなくてはなりません。

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