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奇人・変人・変態の教育観を闇雲に信じるな!

奇人・変人・変態≒“天才”≠凡庸なる庶民
 
 個人的なことながら、私は毎週、決まってブックオフに赴きます。幸いなことに生活圏内に大きな二店舗があることで、格安な書籍を購入しています。そこで特に、数百円コーナーの書棚を眺めておりますと、とりわけ堀江貴文氏と落合陽一氏、そして成毛眞氏のものがひときわ群を抜いて目に付きます。その中でホリエモンのものが断トツでもあります。200円前後の新書や一般書を購入し、目を通して、その感想を申し述べてみたい。
 
 彼らの書籍の内容は、AI社会、IT社会、グローバル社会、即ち、デジタル社会を見据えたハウツー本の類が特徴であります。先が見えない、先が予測できない、変化の異常なる世界への対処の仕方、サバイバル戦略など、特に社会人へ向けたものが大半です。
 堀江氏のものは30~40代、落合氏のものは20~30、成毛氏のものは40~50代の読者層であることが推察されます。デジタル化社会のビジネス戦略として使える点、また、参考程度の内容、極論と映るもの、様々なユニークは視点、意見が目を引きます。ただし、彼らの意見の共通点と申しましょうか、類似点ともいっていい、死角というジャンルがあります。それは、教育の側面であります。
 
 彼らの教育をうけてきたバックグラウンド(環境)が、一般大衆、通常の庶民のものとは、異質であり、本来、彼らが有してきた資質(遺伝)を掛け合わせると、どうも、教育に関しては異議申し立てをしたい。でも、灘・開成といった秀才・天才のルートで社会人となったビジネスマン、また、林修氏のような種族にはインパクトのある、共感もできる意見でありましょう。しかし、受験から入学、就活から入社した通常ルートの、月並みな学生・社会人には、ドラマ・映画の世界の主人公の吐く台詞とも聞こえるものばかりである。だからこそ、自身の上昇志向、スキルアップなどなどで強い刺激ともなっているのでありましょう。“高校生とドラゴン桜”、“社会人とホリエモン本”、そうした“比の関係”が成立します。
 
 では、教育の側面に踏み込みます。
 彼らの育ってきた背景とやらに目を向けたいと思います。
 堀江貴文氏は、久留米大附設校出身で、孫正義の後輩でもあり、その学校は九州でも指折りの超進学校であります。子ども時代に、自宅で両親が購入した百科事典に慣れ親しんだそうです。そのあたりが“情報ジャンキー”のルーツとも語っています。また、中学入学後パソコンを買ってもらい、中学生で天才プログラマーとして収入を得ていたともいいます。東大文Ⅲに入るも、中退します。既に、パソコンやITなどへの親和性を有し、そのスキルを活かしその道で生きていこうと決意したともいいます。時代は、彼のスキルに追い風となり、あのライブドアという大企業へと成長し、その後は、皆さんが知る人生行路を歩みます。学生時代に子どもが出来てしまった縁で、即、離婚します。お子さんは妻方、その後子育てなど無縁の二十数年間を経て今日に至っています。彼はビジネス界の異端児、いわば、“変人”です。
 落合陽一氏は、50代のお父さん連中には、アサヒスーパードライのCMで有名になった作家落合信彦氏の長男であります。彼も、幼少期から、機械類に異常な興味を持ち、なんでもかんでも解体する異常な気質を発揮していたそうです。また、恵まれたことに、子ども時代から、好きなパソコンやコンピュータの機器を与えられ、それに慣れ親しんでいったともいいます。お住まいが六本木という恵まれた家庭で、中学受験をしますが、麻布中学に落ちてしまいます。その後、高校受験でリベンジをします。開成高校に入学します。その後、東大を2度ほど受験し、最後は、筑波大の後期入試で、そちらに進みます。その進路ですが、鉛筆を転がして、「情報メディア創生学類」に決めたといいます。これが、まさしく、<人生の大吉>と出たと本人が語ってもいます。幸運の持ち主です。ここで彼の才能が花開きます。その後東大大学院に進み、今の活躍に至ってもいます。彼自身も公言していますが、「俺は、天才じゃない、“変態”です」よく冷静に自身の資質を見極めておられる、さすがです。賢明なのです。牽強付会的やもしれませんが、自身をメディアアーティストと名乗ってもいますが、落合氏は、そのルーツは発明王エジソンもそうだったと指摘しています。
 最後に、成毛眞氏ですが、彼は、中央大学商学部出身です。学生時代は、勉学そっちのけで、遊びとアルバイトに明け暮れていたともいいます。その後、自動車部品メーカーを経て、西和彦が立ち上げたアスキーに転職します。その後、ビルゲイツが率いるマイクロソフト日本支社長に就きます。キャリアアップに大成功したビジネスマンの典型でもあります。その後、自身の会社を立ち上げ、今日に至っては、経営コンサルタントや書評家など華やかに活躍されてもいます。因みに、近年、彼は学習障害(発達障害)だったことを吐露されています。彼の手前味噌かもしれませんが、自身の上司だったビルゲイツもそうだったそうです。この成毛氏もやはり、“奇人”の部類に入るのでありましょう。
 もうお分かりやもしれませんが、21世紀も20年以上が過ぎ、世の中の変革者、ある意味成功者は、秀才型ではない、もちろん、天才型は希少価値があるため生き残ってもいけるでしょう。しかし、大勢は、ビルゲイツ、スティーブジョブス、ジェフベソスにしろ、天才という括り以上に、奇人・変人・変態の要素が強いのが特徴やもしれません。
 日本においても、そうであります。超進学校を中退し、アメリカへ渡った孫正義、東大を中退したホリエモン、神戸高校まで“問題児”であった三木谷浩史{※父が経済学の大学教授で母が英語堪能の家庭=知的サラブレッド}がエリートの巣窟日本興業銀行を辞めて楽天を立ち上げる。昼行燈的半生を生きた柳井正は、早稲田の政経からジャスコに入社し、その後、小郡の父の洋品店を継ぎ、そこから世界一のファーストファッションアパレルメーカーを築き上げました。
 彼ら日本の実業界の成功者の共通項として、その天才性というより、むしろ、その奇人・変人・変態、そうした気質が見て取れます。もちろん、強烈な個性、強運、えも言われぬ環境、底知れぬ努力もおありでしょう、しかし、その原動力といったものは、そうした気質にあるように思えて仕方がないのです。つまり、コロンブスの<蛮勇>が、近世の市民には<英雄>に見えてしまった人生上の摂理と似たものがあります。
 こうした、孫、三木谷、柳井といった成功者と、次元、そして、規模(スケール)、領域(ジャンル)は違えども、堀江、落合、成毛それぞれの気質は通底しているものがあるようです。因に、孫、三木谷、柳井といったセレブの方々の教育本などは出回っていません、ありません、あったにしろ、参考にすらならないことが、出版社にはわかっているからです。それと同義であります。堀江、落合、成毛氏の教育論、勉強手法、育児法などいっこうに参考にすらならないことをこれから語ってみようかと思います。

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