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5文型に言及しない参考書(問題集)まで登場した!

 先日、弊塾の中学2年のK君の、学校の補助問題集『シリウス』(育伸社)を、見せられた。
「先生、学校で、補語をとる文と書いてあるんですが、これ説明してもらえますか?」という質問を受け、その問題集の目次の項目、“補語のある文”とやらに目を止めた。あれ?この『シリウス』問題集は、数年前のものは手元にあるが、最新版の、教え子の‘改訂版’問題集には、一切‘5文型’という単元はもちろん、5文型の各要素SVOCという記述がない、SやVやOといった文字すらないではないか!
 
 この、<5文型放逐の編集>というものに、違和感を通り越して、軽い衝撃を受け、ああ、塾や私立中学向けの問題集(※性質的に参考書でもある)に、“5文型という用語を用いなくなってしまったのか!“といった、“ああ、英文法というものが、昭和末期、平成をピークに、令和の時代、内部崩壊してゆく、その予兆であるなあ!”と、ある種、感慨をもって、教え子に、その場で、5文型なるものを、指導した。
 
まずは、第2文型を、補語を取る文とだけ記載されてはいるが、何のことはない、SVCの、この第2文型を、日本語の補語と記載し、説明している。そもそも、この問題集全体のどこにも、SとVの記載がない。ただ、主語と動詞という日本語はある。中学2年で、補語というより、勿論、軽く、その用語には言及するものの、一種、C(補語)という記号で教えた方が、断然、手っ取り早い。中学生に、Hは水素、Oや酸素、Cは炭素と、理科(化学)の授業で教えるようにである。
 
次に、第3文型を、目的語を取る文とし、第4文型を、目的語を二つ取る文、そして、第5文型を、目的語と補語を取る文と記載してあるその第2から第5にかけての、文構造の相関関係など、際立った違いや特徴など、比べようもない、わかり難い編集である。
 
 実は、そもそも第1文型の記載がない、これでは、文構造の全体像(第1から第5にかけての)の意識が芽生えない編集である。実は、私の経験上、この第1文型を、徹底的に弊塾では教えこむ。何故か、この第1文型こそ、SVとSVM{※このMこそが、英語学では、Aとも記載される副詞類でもあり、この‘副詞’という品詞の概念が、実は生徒が一番曖昧にして、理解不十分なのである}2タイプがあり、この第1文型を、第2文型や第3文型と勘違いしてしまう生徒が、実に多いからである。いや、そんな勘違いは、読めればいい、わかればいい、そうした教える部族(教師や講師)がいることを前提に語っているまでである。
 この『シリウス問題集』の編集方針は、文科省から、学校現場へ、それが、5文型を用いない方針が、伝染してきた模様にも感じる。また、NHKの教育番組で一躍有名にもなった、『英文法をこわすー感覚による再構築­­­­­­』(NHK出版新書)の大西泰斗の英語観・英文法参考書も反映されてもいるように感じる。彼の“英文法観”は、一度、悪い典型の学校英文法で英語が伸び悩んできた社会人には、有効やもしれないが、発展途上の少年少女には、あまり有効とはいえない。恐らく、この大西氏のNHKのハートで感じる英文法のテレビ番組を観ている方々は、8~9割以上は社会人であることは想像に難くない。令和の中高生なんぞは、そもそも地上波のEテレなんぞは、見向きもしない、観る対象にすらならない。こうした大西派的シリウス問題集の編集は、英文法には、執着しない、拘らない、そうした英語教育方針への、ある意味、忖度、迎合でもある。現在、弊塾にも、複数在籍している、小田急線経堂近くにある、私立の中高一貫の名門女子校など、中学3年間で、一切英文法を、教わらない、文法用語すら知らない{疑問詞や関係代名詞や接続詞といった用語すら知らない!}、だから、「この“who”は疑問詞ではなく、関係代名詞だよ」「この“that”は接続詞ではなく、関係代名詞だよ」と教えても、そもそもそうした基本用語すら教わってきていない女子生徒である。高校1年、2年で入塾してき彼女たちは、チンプンカンプンである。この違いを挙げるまでもなく、5文型を知っているか否かで、理解の深度が断然違ってもくる。ちょうど、幼稚園児から小学校1年生くらいの少年に、生物を教えるのに、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、鳥類と分類して教えることが、この5文型の意義でもある。また、「この“as”は、接続詞ではなく、前置詞だよ」と、その英文法白紙状態の女子生徒らに説明してもぽかんとしている。この学校の女子は、品詞の名称すらしらない、君みたいな、生徒を、‘英語のヒンシ{品詞と瀕死を掛けている}の重傷というんだよ!’とおやじギャグ紛いに皮肉を言う。それでいて、この女子たちの通うO学園は、高校から英文法を軽く教え始めるともいう。もう、手遅れである。しかし、その教え子たちは、英検2級は持ってはいるが、きちんとした和訳や英作、そして、一般的なMARCHレベルの英文法問題はからっきしダメ、そういう、能動的、記述型問題がお手上げの英語種族がわんさか、巷には、生まれつつあるというのが、現況の日本の学校英語教育というものである。
 
 こうした英語教育方針の傾向は、弊塾に多い神奈川県のお嬢さん学校SS学園の英語手法とも似ている。中学時代は、学校の授業では、あまり深く英文法は教えない、いわゆる、習うより慣れろ方式で、オーラル系、コミュニケーション系の英語の授業をする。しかし、高校生になると、コテコテ、ガチガチの英文法重視に、急シフトする。つまり、中学英語は、英語嫌いにならないことを絶対是とする方針か(?)、小学校英語の延長線で英語を15歳前後の女子に教えてもいる。中学生になっても、XやYを禁じる算数をやっているようなものである。こうした傾向は、やはり、私立の女子校に顕著である。
 
 卑近な喩えでもあるが、再度言わせてもらう幼稚園から小学校低学年で、生物は、哺乳類(第五文型)、爬虫類(第四文型)、両生類(第三文型)、魚類(第二文型)、鳥類(第一文型)と分類して教え、そして彼らは、生き物の実態と生態を考え始めるように、英文法の初期段階の終了時点、丁度、中学2年の、まあ、英検3級程度の英文を、知的に、能動的に、そして、高校英語へ飛躍するための‘ロイター板’として、5文型は、必須であるように思われてならない。勿論、フランス語などのように非英語の第二外国語では、こうした、緻密で、厳密な分類など、重視してはいないし、また、用いもしない。しかし、である。初等英文法を、中等英文法にステップアップするには、5文型は、教える立場上、また、学ぶ立場上、二級建築士から一級建築士になるための、数学のような位置づけにあるとまで、極論ながら、口にする者はいない。
 
 教え子に、高校3年生向けの授業で、東大や京大の英文から英検1級の英文に至るまで、和訳させる以前に、まず、何文型かを質問して、答えさせることにしている。5文型と日本語訳をリンクさせて、言わせるのである。偶然訳と必然訳と見抜くためである。時に、多数の教室では、文型だけでも、挙手で、応えさせる手法を用いている。文型が解れば、6割から7割は、日本語として不自然であれ、ぎこちない和訳であれ、その生徒本人は、その英文の内容は了解できているはずだからである。5文型が見抜けても、きちんとした和訳ができていない、あるいは、和訳を読んでも意味が意味不明であるケースは、その英文内容への知識不足{女子だったらスポーツの知識がないとか、理系男子だったら世界史の知識がないといった原因}や国語力{根本的な読解力のなさ}に問題がある場合がほとんどである。
 

 

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