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中等教育にも実学主義?

実学という魔物が大学から高校へと舞い降りてくる!
 
 最近ニュースで知ったことですが、楽天の株式時価総額が1兆9千億ヤフー2兆1千億、そして、リクルート6兆1千億、改めて、リクルートの凄さを知った思いがしました。また、創業50年以上も経ち、定年まで勤務した社員は数名しかいないとのこと。ほとんどは、社員時代に築き上げた人脈などを武器に独立して、自身の会社なりを立ち上げる企業風土とのこと。教育実践家の藤原和博氏など、様々な業界で大活躍している人材を輩出する“企業でありながらも独立を後押しするスクール”とも言える会社でもあるのです。副業OK、独立後押し、非日本的大企業でもあります。形は違えど、今東大生に一番人気の業種、マッキンゼーやボストンコンサルティングのような、将来の本当の仕事を見つけ出す踏み台のような企業でもあるのでしょう。
 このリクルートを立ち上げた、東大出身の戦後最大のベンチャー企業家江副浩正が、功成り名遂げた後、自身の母校を訪れた時に吐いた言葉です。
 
 「大学というところは、永遠に変わらないものを求める場所なんだなあ」
 
 私が、大学時代に耳にして、その後、命題のように頭から離れなかったことばです。
 その当時、江副氏は、少々自身のベンチャー的精神から、皮肉を込めて吐いた言葉だったように思われます。「私たち企業家は、永遠に変わり続けるものを追い求めるのだ」という、生きる世界が違うという意味にも捉えた気がします。しかし、この言葉は、平成から令和の時代、逆に、私には肯定的意味として、不思議と心に響いてくるのです。
彼が目にしたものは、文系学部のゼミやら授業だったと思われます。恐らくそうだったでしょう。理系に関していえば、特に、理学部などは、基礎研究で、工学・技術などの普遍的サイエンスの真理(永遠不変なる(ことわり))を追い求めるジャンルなのです。この80年代、90年代の、こうした基礎研究があったればこそ、2000年から2019年に至るまで、自然科学系のノーベル賞受賞者の数がアメリカに次いで世界第2位になる栄誉を得たものと思われます。
 数学者藤原正彦氏によると、イギリスのケンブリッジ大学{※ニュートン・ダーウィン・ケインズなどを輩出}では近年まで工学部系の学部は存在しなかったとのこと。大学では、理学部しか理系は存在しなかった。英国では、実学的工学部が一段低いとみなす学術的風土が昔からあるらしいのです。日本では逆です。工学部など東北大学{本多光太郎や西澤潤一など}に代表象徴されるように、軽視されてはいません。京都大は、もちろん、湯川秀樹・朝永振一郎・福井謙一に代表されるように、理学部の総本山です。日本では、東北大学(実践)と京都大学(理論)の調和のとれた両輪で国を支えてもきたのです。
 近年、日本では、国に金がないのか、産学共同研究といったものが花盛りです。また、私立でも、近代マグロに代表されるように、実学へとシフトしてきています。端折って言えば、アカデミックの理学部志向から工学部志向へと風向きが変わったとも言える現象です。
 こうした高等教育における“実学”志向が、2020年度の教育大改革に象徴されてもいます。これは、高大接続と称して、中等教育をも実学志向へと誘導する目論見に思えてならないのです。これは、私がしばしば引用する三匹の子豚の譬えです。長男・次男{工学部進学のタイプ}の藁の家・木の家、これさえこしらえれば雨露凌げて、安心だという論理であります。狼、即ち、台風や地震に見舞われたら、即、崩壊の憂き目に遭います。長期的視野で、三男{理学部進学のタイプ}のレンガの家をこしらえるという発想の欠如とも言えます。これが、国語と英語の2020年度の新テスト採用に典型的に表れもいます。
 高校の国語の教科が論理国語{※大方の高校が採用するとされる教科}という馬鹿々々しい名称の代物となり、文学作品一切を排除するという愚挙にでました。英語に至っては、センター試験に変わり、<読み・書き・話・し聞く>をすべて均等に配点する英検やらTEAP{上智系}やら、GTEC{ベネッセ系}など、実用性を重んじる試験へと大きく舵を切りました。これなども、元文科大臣下村博文が、穿った見方をすれば、特に英語検定協会への利益誘導による、従来の試験制度の解体殲滅策略以外の何ものでもありません。6年から10年も英語をやって話せないという、英語負け組・英語話す動機なき組の“声”を牽強付会的に強引論理で、<話す>力を試すというたった、その1点を錦の御旗として、大学入試センターという“幕府”を滅ぼしにかかったのです。
 高等教育(大学)における実学志向、これは、仕方ないいとします。しかし、高校・中学という中等教育に至るまで、実学志向のカリキュラム・システムを採用する・誘導するということに関して、特に、大学入試制度に関して行う愚挙、これをこれから考えてみたいと思います。

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