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中等教育における英数国の重要度

 これから中等教育における英数国の大切さの比重に関してお話したいと思います。これは、弊塾の入塾ガイダンスで、特に中学生のご父兄にお話してきたことでもあります。
 
 では、まず、中学校3年間で、一番大切な科目は何でしょうか?と問いかけます。「それは、やはり国語じゃないでしょうか?」とか、「英語では?」とよくお答えになられるお母様がいらっしゃいます。勿論、全ての科目は大切です。しかし、お子さんが、高等教育へ向けて、即ち、行きたい大学に合格するという5,6年後を見据えての大切さを言いたいわけです。これは単純に比較はできません、それは、家族の中で、おじいさんと、お父さん、そしてお母さんの重要度を、我が子に求めるようなものでもあるからです。しかし、現実的視点で、長期的ではなく、ある意味、短期的現実的に、その大切さを敢えて求めた場合の重要度を言いたいのです。
 それは、数学です。二番目が英語、そして三番目が国語とあいなります。これは私の個人的経験則と教育的体験を融合しての私見ではありますが、70%から80%の確率で自身をもって言えることです。
 次に、高校の段階では、どうでしょうか?それは、一位が英語とあいなります。
 それでは、その理由をこれから述べてみたいと思います。
 
<図Ⅰ>
  数          英          国      国  <重要度1>
  英         数 国        専 英    教 養 <重要度2>
  国         理 社        (数)        <重要度3>
<中学校>      <高 校>      <大 学>  <社会人>      
 
 まず、中学校の段階では、数学が一位にきます。その論拠は、あとに回します。それでは中学時代の英語の二位に関して述べるとします。
 中学時代の英語は、ある意味技能英語といって、日常生活で必要とされる程度の英語です。この時期の英語で、つまずく生徒は、大方、お父様の生活習慣病の如く、自身の日ごろの心構えや規律のある日々の生活に原因があるものです。
 そもそも、中学時代の英語が苦手となる生徒の原因は、次の通りです。
 
①英語の重要度、英語へのモチベーションが低い、そのためやる気がないケース
 
②通称“置きベン”として、教科書を学校に置きっぱなし、また、自宅でさえ定期テスト1週間前しか開かないケース
 
③本人は、やる気があるつもりでやってはやってはいても、理解不十分、間違った理解のまま学年が進んでいるケース=親が子供の英語の理解度へ無関心なケース
 
④学校の先生の教え方が、“上手く”ても、本人に適応していないケース
 
⑤学校の英語進度への理想が高く、現場の自校の生徒の実力・能力も考慮せず、レベルの高いテキスト・教材(プリント)を使用しているケース
 
⑥本人がやる気があっても教え方が雑で、手抜きとしか思われない授業をしているケース
 
⑦これは中2以降に該当しますが、なまじっか、小学校時代に“なんちゃって英語”を学んで、中1のとき、“英語はこんなもんか、勉強しなくても点数がとれる!”となめてかかっているケース 
 
 以上のように、中学時代は、ほぼ環境や本人のメンタルが英語の成績に影響している場合が殆どなのです。
 
中学校英語とは?
 
 ちょうど、中学校の英語登頂のレベルは、登山でいう高尾山から富士山程度なのです。登ろうと思えば、誰でも登れる峰なのです。お父さんが、会社の同僚と、来月富士山に登ることになり、1カ月前から、家の周辺を毎日数キロウォーキングすれば足りるレベルなのです。ですから、よく書店などで見かける社会人やり直し英語といった表題の英語学習書などは、ほとんどが中学校レベルから英検準2級程度の易しい英文法に基づき書かれているものであります。そうです、中学校英語は、話すための英語、しゃべる基礎を作る英語であって、英文法など難しさより演習や反復でものになるレベルなのです。ですから、中学校の英語で躓いても、高校1年、いや2年でもやり直しできるレベルのものです。高校でリベンジが効く科目でもあります。やる気と努力、計画性で急上昇する事例は、ビリギャルを持ち出すまでもなく、多々あるなんてもんじゃありません。
 
高校英語とは?
 
 それに対して、高校英語はどうでありましょうか?それは、中学英語が国内登山と称しましたが、ヒマラヤ登山に該当するレベルであります。中学校レベルの基礎のもと、やはり、地頭と努力の兼ね合いがモノを言う世界です。お父さん連中が、富士山登山ができたから、次はエベレストだ!そうは問屋が卸しません。キリマンジャロ、モンブランなど、5千から7千メートル級の高峰を順次踏査した登山者しか、身体がついていかないのと同義であります。富士山の次ぎに、エベレストにチャレンジすれば、その者は、4~5千メールあたりで高山病を発し、地元シェルパに背負われて下山するのが落ちです。
 
 中学英語が、登山者の領域、高校英語は登山家の領域、それくらいの覚悟で高校英語は臨まなければなりません。中学英語が得意、成績が良くても、高校になったら、急に下がる、模試でも思わしい点数がとれなくなる現象がそれを象徴してもいます。
 
 喩えて申しましょう。中学英語が真の意味で得意とされる中学生がいれば、それは甲子園に出場できる球児に該当すると言えます。16歳から、アメリカで日常生活はそこそこできます。でも、その甲子園出場の高校球児が、プロのドラフトにかかり、どこかしらの球団に入り、プロの野球選手として大成するか、それは話は別です。また、それは、甲子園などでなくても、プロとして活躍する選手がいるのも事実であります。何が言いたいのか?それは、中学英語が、高校野球レベルだとすれば、高校英語は、プロ野球レベルであるということです。その自覚を親御さん、そして生徒本人は持っていただきたいのでありあます。この点、「英文法は基礎さえやれば十分だ!あとは音読だ!」「英語なんて簡単さ!言葉なんだから、誰にもできる!」などと喚く某カリスマ予備校英語教師たちがおりますが、その方の発言など、無責任極まりない、<日本の英語風土の中での英語学習>の実態が分かっているのか、はなはだ英語教育者として疑念を抱かざるを得ません。
 それに、でありますが、中学時代英語が苦手でも、高校では、特に、そこそこの大学を目指すとなると、英語は避けては通れません。必須であります。ちょうど、江戸から上方へ行く、大坂から江戸に来る、その際、箱根の関所は避けて通れなかったのと同じであります。文系理系、いっぱしの大学への関門・関所、それが英語という科目なのであります。だから、高校生ともなると、仕方なく、やらざるを得ない、まじめに取り組まざるをえぬ宿命を受験生は背負っているのであります。中学時代、英語が苦手であっても、男女を問わず、受験生は、外発的に、できれば内発的がよろしいのでありますが、必死になって英語に向き合うのであります。だから、16歳まで放っておいても、自動的にやる気になる、だから、中学時代は、二位の位置づけにしたのであります。
 
 では、中学時代に数学を一位にした理由をこれから述べさせていただきます。
 
中学時代はまず数学だ!
 
 それは、こういうことです。中学時代に数学が苦手だった生徒で、高校時代に数学が得意になった事例は、ほとんど聞き覚えがありません。英語は、そういう事例は掃いて捨てるほどあります。社会人になってなど、特に有名であります。語学なんぞは、そんなものです。中学時代に数学が苦手だった生徒は、高校生になって、その数学を中学時代の基礎に立ち返り、英語のように殊勝に勉強に励む生徒は皆無であります。理系のビリギャルのケースは、いくつかの例外はあるものの、ほぼ理系では不可能であると申し上げらます。ドラマ「ドラゴン桜」のようなケースはフィクションの世界(ケース)で参考にすらなりません。高校時代の‘文転’という用語は有名ですが、‘理転’というものは聞き覚えがありません。それが、ものの見事に実態を物語ってもいます。
 もし、中学時代に数学が苦手だったら、将来、医師はもちろん、エンジニアなど理系の職業には就けません。ましてや、旧7帝大など、あるレベル以上の国公立大学には、センター試験(入学共通テスト)で、文系であっても数学は必須であります。よって、数学が苦手な生徒は、東大の文Ⅰから一橋、そして横浜国大に至るまで、入学は絶望的であります。数学が苦手だと、東工大から医学部、そして、早稲田の理工から横国に至るまで、時に、看護系から管理栄養士にさえ、その数学の重症度で可能性は相当下がってしまう。従って、数学が苦手な生徒は、必然的に、私立文系のルートを選ばざるを得なくなるのです。ここに、中学時代の数学の重要度一位の本義があるのです。
 
 では、もう一つ、数学の中学時代の重要度一位の根拠を申しましょう。
 
 それは、英語に比べての、その難易度にあります。率直に申し上げましょう。中学の英語を本当の意味でモノにしたレベルを甲子園出場の球児のレベルと申しました。それでは、数学はどうでありましょう。それもやはり、甲子園出場のレベル(公立中学校)と申せます。では、高校数学はどうかと言えば、それは、メジャーリーグで活躍できるレベルということでもあります。高校英語が日本のプロ野球レベル、高校数学は、メジャーリーグレベルと申せます。難易度の次元が違うのであります。灘校は、この点を日本中の学校で一番わきまえてもいる学校です。松井、イチロー、松坂、マー君、大谷レベルでなければ、ある意味、早慶上智以上は心もとないのであります。
 中学時代英語が苦手な生徒は、高校生になって得意になるケースはざらにあります。また、中学時代英語が得意で、高校生になって、苦手になったケースもありましょう。それは、心の持ちようと人間的成長が止まった17歳なのです。高校英語は、努力と戦略でどうにかなる領域です。しかし、数学は違います。中学時代に数学が得意であった生徒でも、高校生になると苦手、捨て科目とするケースは、余りにも有名であります。これは、数学の難易度が格段に上がる証拠でもあります。それは、中学数学と高校数学の履修のバランスが偏り過ぎていることが原因の一つでもあります。また、中学時代数学が苦手で、高校時代得意になった事例など、数万、数十万に一のケースで存在しないのではないでしょうか?ここに、私が、数学を中学時代に重点を置く論拠があるのです。
 大方、私立の中高一貫校、特に神奈川県の例ですが、サレジオ学院から浅野学園、そして聖光学院や栄光学園など、中学時代末に、数学Ⅱに入ります。その一方、県立ナンバー校(翠嵐や湘南)でさえ、高校1年から数学ⅠAを始める。ここに、私立と公立の理系や国公立進学率というものに差が出る大きな要因があるのです。
 中学数学、これは、文科省の規定による範囲を超えて、中学生で、せめて数学ⅠAくらいは消化していなければ、高校生になって、3年間で、数ⅠAから数ⅡB、更に、数ⅢCなどやろうものなら、2年半という時間内では、到底、センター試験(共通テスト)の数学を7割以上、MARCHの理系レベルの数学を6割以上ゲットなどおぼつかない現実が文科省の役人たちにはわかっていなのです。国の方針なんぞに従っていたら、数学不良児、数学ドロップアウト児、数学嫌悪児を多数生み出す現実を私立校の当事者は熟知しているのです。
 
 横浜雙葉や湘南白百合といった小学校から高校まである中高一貫校での事例であります。
 
 小学校の時、算数が好きだった生徒は、7割といいます。
 中学校の時は、数学が好きだった生徒は、5割に落ち込みます。
 高校の時は、数学が好きな生徒は、3割になるとも言います。理系を含めてこの数字です。積極的に数学を学ぼうとする生徒は、恐らく1割前後でありましょう。{※数学随想:本コラム参照}
 
 この数字をもじって、<数学の753>現象ともいうようです。もちろん、教え方、学校の方針もありましょうが、多分、その原因は、数学の難易度の急上昇、そして、中高の数学のカリキュラムの歪さ、偏りにあります。中学時代の内容が易しいにもかかわらず、その3年間を間延びして、悠々と、“ゆとり”の数学の時間にしてしまっている現実が、昨今の、いや、近年の理系離れ、即ち、数学嫌いの一番の原因なのです。
 
 こうした数学の科目が置かれている立ち位置からして、中学時代は、数学に比重を置かねばならないのです。中高一貫校の女子校、例えば、女子校横浜御三家で、私の個人的感想でありますが、まともな理系志望者が満足するような数学から物理にいたる授業をしているのはフェリス女学院くらいではないでしょうか。今や、STEAM教育で注目の、日本人初の女子数学オリンピック金メダリストの中嶋さち子さんを輩出するくらいですから。横浜雙葉にしろ、横浜共立にしろ、早慶の進学者の3分の2は文系であると思われます。フェリスは、それほど理系文系は偏ってはいないようです。(つづく)

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